志、未来へ繋ぎたい 皆様と共に行動を起こし、この危機を解決し日本の健康に貢献したいと願っています。

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2016年秋号

初心者のための専門医制度まるわかり

どうやったら専門医を取れるの?

まず、専門医試験を受けるためには、経験年数と症例経験数・手術経験数と学術業績の3つの基準をクリアすることが必要です。経験年数については、初期臨床研修修了後、3年間または4年間の専門研修を修了することが条件となります。専門研修に入ってすぐにすることは研修登録です。多くの専門医では早めの登録で初期研修期間の症例も登録できるからです。基本的には、症例経験数と手術経験数の両方の申告が必要です。各科で異なりますが、例えば、必要な手術経験数が一番多い外科専門医が350例のほか、脳神経外科150例、泌尿器科80例、産婦人科50例が基準となっています。もちろん、虫垂炎手術の第2助手だけで350例ではダメで、執刀医としての経験や手術内容にも基準があるのです。ちなみに、整形外科専門医では、手術経験数の申告は不要で症例数を重視しています。各専門医の資格条件は必ず確認しましょう。学術業績の基準はちょっと複雑です。まずは、必要単位数と単位一覧を確認しましょう。例えば、外科専門医では20単位が必要で、日本外科学会での学会発表1回分に相当します。泌尿器科専門医の必要単位数は100単位で、学会参加や講習、学会発表、論文発表などで各1~3単位をコツコツ集める必要があります。

専門医認定試験はどの専門医も筆記試験と面接試験(または口頭試験)の2つが必須です。外科専門医だけは筆記試験を合格しないと面接試験を受けられません。筆記試験はマークシート方式で、専門医としての基本的な知識を問うものがほとんどです。問題数は、外科専門医試験が110問、産婦人科専門医が120問、脳神経外科専門医が250問とそれぞれ異なります。面接試験または口頭試験も各科で異なりますが、「診療能力を問うもの」と「診療能力以外を問うもの」の大きく2つにわかれます。前者の例として、脳神経外科では提示された症例について診断や治療方針を答えていきます。後者の例は外科専門医で、面接試験では、医の倫理と生涯教育が出題範囲に含まれています。

専門医資格は5年毎の更新が必要で、学術業績単位数と症例数の基準をクリアする必要があります。大切なことは、各専門医の資格条件を熟読し、先輩に過去の専門医試験の内容をよく聞いて、早め早めに動くことです。

これだけは知っておきたいポイント

  • 新専門医制度では、基本領域専門医とサブスペシャリティ領域専門医の二段階制になる
  • 基本領域専門医に含まれるのは、外科、脳神経外科、整形外科、泌尿器科、産婦人科、形成外科、耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科など
  • 基本領域専門医の研修期間は初期臨床研修修了後、3年間または4年間
  • 認定試験を受けるには、症例経験数・手術経験数と学術業績の基準を満たす必要がある
  • 認定試験は筆記試験と面接試験(または口頭試験)の2 つから構成される
  • 専門医資格の更新は5 年毎に、学術業績単位数と症例数の基準を満たす必要がある
  • 消化器外科や心臓血管外科、脊椎脊髄外科などのサブスペシャリティ領域専門医になるためには、その前に基本領域専門医をとらなければならない
  • 専門医認定基準の各論は診療科によって異なる

私が外科医になった理由~研修医・医学生に送るメッセージ~

「学生の頃、自分が外科に進むとは思わなかった。女性である自分が外科医になるイメージがあまり湧かず、もっとガツガツした人が進む診療科だと思っていた」――。そんな関氏が外科に進んだのは、初期研修中に入った手術でその楽しさを知ったことがきっかけでした。実は、初期研修先は「東京で働きたい」という夢を叶えるために選んだ面が大きかったそうですが、結果的に、この選択が外科医への道を開くことになりました。

やりたいことができる環境で手術の楽しさを知る

初期研修先は、初期研修医や若手医師がたくさん集まる市中病院や大学病院とは違い、多くが中堅医師。手技が取り合いになるようなこともなく、やりたいと言えばほとんどのことはやらせてもらえる環境でした。新しいことにチャレンジするときは、必ず経験豊富な指導医が監督に入り「ここまでなら初期研修医にも経験させられる」と判断してくれていたため、安心して経験できました。手術は、自分で経験せずに見ているだけでは面白さは分かりません。自分で手術を経験すると責任感が芽生え、より勉強することで、どんどん面白くなっていきます。

とはいえ、手術の楽しさだけで外科を選ぶつもりはありませんでした。私は医学生の頃から、女性であることを生かしたいという思いがあり、産婦人科などにも興味を持っていました。そんなとき、乳腺外科に出会いました。

乳癌は、女性の癌の中で最も罹患率が高い疾患です。患者さんの中には、「これから結婚や出産を考えていたのに…」と落ち込む方も少なくありません。そんな患者さんを見ているうちに、治療だけでなく、その人の生活も考えて、女性ならではの配慮やサポートができる乳腺外科医になりたいと考えるようになりました。

論より証拠が好きな性分 練習好きな自分に合っていた

私の乳腺外科医としてのキャリアは2 年目に入ったところです。手術は相変わらず楽しくて、今は症例数の多い後期研修先で修行の日々を送っています。

内科は、検査や問診を駆使して疾患を解明していく謎解きのようなところが魅力です。ただ、自分がたどり着いた答えが正解だったのかどうか、最後まで分からないこともあります。一方、外科は原因も結果も目に見えるので、分かりやすいというのが特徴だと思います。手技はやればやるほど上達するのが自分で実感でき、努力が反映されやすい分野であると思います。

私は幼少期から、コツコツと同じ事を繰り返し練習するのは苦ではありませんでした。一定の目標を設定し、そこに向けてひたすら自分のレベルを上げていくような作業が好きなんです。こういう性分からも、外科は自分に合っていると実感しています。

ちなみに、学生時代は女性で外科医は無理、と考えていましたが、いざ外科医になってしまえば、慣れてくるものなのだな、と思います。内科医には内科医の忙しさがありますし、外科医だから結婚や出産ができないという事はないと思います。まだまだ男性社会であるところも多いかもしれませんが、先輩方の話を聞いていると、以前と比べれば女性に対する配慮はどんどん進んできていると感じます。例えば、今の職場は主治医制ではなくチーム制を敷いていて、保育園のお迎えで抜けた人がいても他の人がカバーできる体制にしています。働きやすさは以前に比べて良くなっているのだろうと思いますし、選択肢はいろいろあります。

最後に、外科に興味がある医学生や初期研修医の先生にメッセージを贈るとすれば、「やりたいことをやってほしい」ということです。私もまだ偉そうなことは言えないけど、忙しいといわれる外科にはそれだけのやりがいや達成感があり、先入観で外科に進むのをあきらめてしまうのは、とてももったいない。手術が楽しい、椅子に一日中座っているのはツラい、という人は外科に向いていると思うので、ぜひ外科医の道を目指してみてください。

プロフィール

関晶南(せき・あきな)氏
聖路加国際病院(東京都中央区)乳腺外科。
愛媛県出身。高知大学卒業後、東京臨海病院(東京都江戸川区)での初期臨床研修を経て2015年から現職。

意外と知らない心臓外科の歴史

研修医や医学生のみなさんは、病気の知識や手術手技を一生懸命勉強していることと思います。ちょっと頭を休める意味で、医療に関わる歴史を見てみましょう。今回は、心臓外科の発展の道のりです。

心臓外科は、人間の大切な臓器である心臓を扱う科ですから、これまでに多くの先人達が英知を結集して手術を発展させてきました。今からさかのぼること100年以上前の1896年、Ludwig Rehn先生は外傷により刺された心臓を縫い合わせる心筋縫合の手術を行いました。ドクドクと脈打つ心臓を見ながらどんな気持ちでメスを握ったのでしょうか?そして、1930年代にRobert Gross 先生が肺動脈と大動脈を結ぶ動脈管が閉じない病気(動脈管開存症)に対して、動脈管結紮術を行いました。さらに手術は発展し、1940年代に入ると、短絡手術や僧帽弁交連切開術が登場します。そしてついに、1952年、John Lewis先生は心臓を開いて心房中隔欠損症の手術を成功させました。その後は、人工心肺の発達とともに、多くの高度な心臓手術が発展してきました。現在、心臓を止めずに拍動下で冠動脈をつなぐオフポンプバイバス手術がどんどんと増えてきています。また、大動脈弁狭窄症に対して開胸手術をおこなわずに治療する「経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)」が開発され、リスクが高く人工心肺装置を利用できない患者さんに対しても適応範囲が広がってきています。このように、心臓手術は日々進歩しており、10年前と比較しても飛躍的に技術・成績は向上しているのです。

もちろん、心臓外科だけでなく外科系手術は機器の開発と外科医の技術進歩に伴って日進月歩です。外科系診療科は、術者の腕前が成果に直結し、直接病巣を目にすることができ、ダイナミックな技術や機器の発展の流れを体感できる診療科ともいえます。

編集後記

本刊は「研修医・医学生のキャリアを応援し、学びを提供する」をコンセプトに発刊しました。発刊主体であるNPO日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会(略称:CENS:センス)は、外科医療の活性化を図るため「教育・広報・行政対応」の3本柱を軸に活動している団体で2009年に設立されました。

研修医・医学生が「ちょっと読んでみようかな」「役立つ!」「意外とおもしろい」と思ってもらえるような読み物をつくっていきたいと思います。