特定非営利活動法人 日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会(若手外科系医師を増やす会)

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ニュースレター 2017年秋号

今号の内容

インタビュー
望まれる女性リーダーの活躍――
「イクイティ」の視点で環境改善を

昭和大学ブレストセンター長として乳がん診療の最前線に立つ傍ら、日本外科学会男女共同参画委員会委員長も務める中村清吾先生。女性外科医の総活躍社会を実現するためには、何が必要なのか――その取り組みと課題、そして次代に向けた展望について、お話を伺いました。

Perspective
どうなる?どうする?医師の働き方改革

医師の残業時間規制の在り方など医師の働き方に関する議論が熱い。今後の政策の方向性はどうなるのだろうか?

望まれる女性リーダーの活躍――
「イクイティ」の視点で環境改善を

昭和大学ブレストセンター長として乳がん診療の最前線に立つ傍ら、日本外科学会男女共同参画委員会委員長も務める中村清吾先生。女性外科医の総活躍社会を実現するためには、何が必要なのか――その取り組みと課題、そして次代に向けた展望について、お話を伺いました。

――現在の女性外科医をとりまく状況を、教えていただけますでしょうか。

中村(敬称略)女性外科医の数は、世界的に見て増加傾向にあります。2010年時点の米国では、外科医のうち女性が30%を占めていますし、日本でも2012年時点で20%近くに上っています。この数字は今後さらに増加していくと思われます。その一方で、長らく男性中心社会であったがゆえに、女性が真に働きやすい環境が存分に整えられていない点が課題です。

――最も大きい課題はやはり、出産・育児に伴うケアの問題でしょうか。

中村 清吾 先生

中村はい。出産を機に休職してそのまま離職、というケースは残念ながら相当数あります。復帰が難しい現状を変えるには、管理側が育児介護休業法に則った体制を徹底することがまずは必須です。加えて、新しい技術や制度を導入していくことにも取り組んでいます。

――それは、どのような技術ですか?

中村たとえば、在宅中の「eラーニング」活用です。eラーニングはここ数年で非常にプログラムが充実してきています。熟練した医師の手術の映像で学ぶこともできますし、多様なケースを診療する疑似体験もできます。学会で講義を修める代わりに、eラーニングでの学びに単位を付与する仕組みも整えています。学ぶだけでなく、在宅での「診療」にも今後範囲を広げていきたいですね。病理診断・画像診断に関しては専門医不足に悩む分野もありますが、近年の精度の高い画像なら、在宅の医師によるサポートも可能です。離職の防止と、マンパワーの補充が同時にできるわけです。

――そうなれば素晴らしいですね。制度としてはどのような取り組みをされていますか?

中村「18歳未満の子供を持つ医師のストレス」について随時アンケートを実施し、課題を調査しています。男性の育児参画を促すため、女性医師に限らず父親である男性医師に対しても行っています。また、子供の年齢を高く設定している点もご注目いただきたいところです。育児というと、出産直後から幼児期までの期間ばかりがクローズアップされがちですが、子育てはそれ以降も続く長い営みです。成人までの長いスパンでフォローすることが必要だと考えています。

――対して、女性医師たちの視点から見るとどうでしょう。外科という分野に対して、どのような意識を持っているでしょうか。

中村数年前、韓国で若手医師を対象に「診療科を選ぶ際の基準」を調査したところ、女性医師の多くが「リスクが少ないこと」「負荷が少ないこと」といった回答をしました。そうした回答者たちは放射線科や麻酔科などを目指す傾向がありました。日本にも「外科医はハードだから避ける」傾向がないとは言いませんが、その一方で、外科医志望者が増えていることも事実です。2016年時点で、外科専門医取得者の22%を女性が占めており、乳腺外科に限って言えばほぼ半数が女性です(グラフ)。女性の病気を扱う診療科なので、男女共同参画に関してはもっとも先端的位置にいると言えます。

――確かに、半数とは大きい数字ですね。

中村しかも年代が若いほど、女性の比率が高くなっています。30代前半の資格取得者は、男性を遥かに上回っています。ちなみに乳腺外科には、若い患者さんが多く来られます。乳がん罹患の年齢分布を見ると、30代前半の方も少なくありません。つまり医師たちと同年代、かつ出産や育児の真っ最中という患者さんが多いのです。年代・環境ともに似た立場の女性医師が増えれば、辛い状況にある患者さんの気持ちを汲み取り、寄り添う医療ができる。その意味でも、さらに若い女性医師が増えていくことが望まれます。

――「外科医はハードで体力的負担が強い」といったイメージも、今後変わっていくでしょうか。

中村そうあってほしいですね。実際、「女性は体力的に不利」という場面はなくなりつつあります。たとえば機械吻合が普及したおかげで、昔なら10時間かかった手術が今では3~4時間で終了します。今後、ロボット技術も導入されればさらに負担は軽くなるでしょう。何より、一外科医として伝えたいのは、手術を成功させたときの達成感は何にも代えがたいということです。体力面の負荷が軽減した今、そうした経験のできる分野にぜひ積極的にトライしてほしいところです。

――まったくその通りですね。今後、さらなる改革を進めていくために必要なことは何だと思われますか?

中村ひとつはやはり、男性の理解です。育児参画はもちろんのこと、病院における環境整備、たとえば女性用更衣室や当直室などの設備改善にも積極的に協力すべきです。もっとも、それには時間と人員の余裕を確保することが大前提です。人員が足りなければ環境整備にまで手が回りません。一人ひとりの業務量に余裕を持たせる「のりしろ」を常時保っておきたいところです。

――たしかに、設備やシステムの面ではまだまだ発展途上の病院も多いですね。

中村そこでもう一つ重要な鍵となるのが、女性管理職の存在です。男性主導の現場では、「イクイティ(公正)」の観点がどうしても不足しがちです。長らく男性中心社会であったこの世界では、男性と女性に「同じ」環境や条件を提供する「イコーリティ(平等)」だけでは不十分です。現状がそもそも女性不利な状態ですから、そのズレを正せる施策が必要なのです。とはいえ、女性のリーダーはまだまだ少数です。外科学会に女性理事が一人もいない、という状況からもそれがわかります。

――この部分にこそ、改革が必要ですね。

中村その通りです。この点乳癌学会は一歩先んじており、女性理事がすでに3人います。そのうちの一人である山下啓子先生は同学会内の男女共同参画委員会委員長を務め、現場の声を募って学会活動に反映させています。このように、女性医師たちのニーズを女性リーダーがくみ取って改革を牽引し、男性がそれを理解して協力する、という「循環」をつくることが、何より望ましいと言えるでしょう。

――ありがとうございました。

中村 清吾 先生
中村 清吾 先生
昭和大学ブレストセンター長

略歴

  • 日本外科学会指導医、同専門医
  • 日本乳癌学会乳腺指導医、同専門医、癌治療認定機構暫定教育医
  • 日本臨床腫瘍学会暫定指導医、マンモグラフィ読影認定医
  • 日本乳癌学会理事長 日本外科学会理事
  • NPO法人日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)監事
  • NPO法人日本HBOCコンソーシアム理事長
  • NPO法人日本乳がん情報ネットワーク代表理事
  • 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会副理事長
  • 日本癌治療学会代議員,日本医学会評議員
  • Breast Surgery International (BSI) カウンシルメンバー
  • 米国臨床腫瘍学会(ASCO)会員
  • Fellow of the International College of Surgeons

Perspective
どうなる?どうする?医師の働き方改革

医師の残業時間規制の在り方など医師の働き方に関する議論が熱い。今後の政策の方向性はどうなるのだろうか?

政府の働き方改革実現会議がまとめた「働き方改革実行計画」では、「罰則付きの時間外労働の上限規制」を導入し、医師もこの規制の対象とすることとしている。しかし、医師法第19条にある応召義務などの特殊性を考え、労働基準法改正から5年後の適用開始と猶予期間を設けた。その間に、医療界が参加して検討する場を設定し、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を議論することとなった。そして、2年後を目途に制度や規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等についての具体的なアウトプットが求められている。
この流れを踏まえ、「医師の働き方改革に関する検討会」(座長=岩村正彦・東大大学院法学政治学研究科教授)が設けられ、第1回会合が8月2日に開催された。同検討会の構成員は総勢22人であり、若手勤務医、女性医師、看護師、病院管理者、医療団体の代表、労働法の専門家などが参画し、医師だけでなく多面的・複合的な視点を設けている。初会合には塩崎恭久厚生労働大臣(当時)が出席し、「医療の生産性を高め、提供する医療の質を維持・向上しながら進めていくこと」「他職種へのタスクシェアリング(業務分担)、タスクシフティング(業務移管)を通じて医療現場の負担を最適化し、若手医師や女性医師も働きやすい環境を調整する必要性」を強調した。
厚生労働省の医師勤務実態調査(※)では、1週間当り60時間以上働く勤務医(正職員)の割合が41.8%で、他産業・他職種と比べるとその割合が最も高かったことが明らかになっている。また、病院常勤医の診療外時間などを含めた勤務時間は、男性が平均57時間59分で、女性が51時間32分であり、特に、20歳代の男性は64時間59分と最も多いことが示されている。あらためて医師の過重労働・長時間勤務の実態が浮き彫りとなった。
最近、過重労働・長時間勤務により心身共に不調をきたす医師が増えてきていることもあり、医師の労働環境の改善が急務であることは論を待たない。応召義務や医師のモチベーション、自己研さんのための時間確保等の様々な要素が絡む複雑な問題であるからこそ、多面的かつ包括的な議論が必要であり、早期に実現可能性の高い解決策の提示が望まれている。

※出典:第1回医師の働き方改革に関する検討会資料

裵 英洙
著者プロフィール
裵 英洙
病院経営コンサルティング会社
ハイズ株式会社 代表取締役社長
(医師・医学博士医・MBA)
高知大学医学部客員教授
専門領域:医療経営、ヘルスケアビジネス戦略

略歴

平成10年4月
金沢大学医学部附属病院 第一外科(現:心肺総合外科)
平成19年4月
公益財団法人 健康予防医学財団 理事 就任 ※現在に至る
平成21年3月
慶應義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)修了
平成21年3月
メディファーム株式会社 代表取締役 就任
平成26年10月
ハイズ株式会社 代表取締役 就任 ※現在に至る
平成28年3月
株式会社ケアネット 社外監査役 就任 ※現在に至る
平成29年4月
高知大学医学部客員教授 就任 ※現在に至る

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